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狭山闘争                        かけはし2010.7.26号

全証拠を開示し事実調べを

再審求めて狭山江東地区集会
足利・布川事件に続いて石川さんの冤罪をはらそう

 【東京東部】七月九日、江東区総合区民センターで「狭山江東地区集会」が部落解放江東共闘会議主催で開かれた。あいにくの激しい雨が降る中、東水労、東交、下町ユニオンなど労働組合や市民運動団体が集まった。
 司会の松下さん(江東区に夜間中学をつくる会)が「本日、布川事件の再審第一回公判が開かれ、大きな関心が寄せられている。、足利事件で三月二十六日、完全無罪を勝ち取った。袴田事件を扱った映画が五月末に公開され、狭山事件と同じように、自白の強要や証拠のでっち上げを見事に再現していて、大きな反響を呼んでいる。こうした再審を求めた流れは狭山事件にも及んでいる」として、集会の重要性を訴えた。
 部落解放江東共闘会議の平野さん(下町ユニオン)が「昨年の地区集会の時、三者協議(東京高裁、高検、弁護団)が九月に開かれるということで、『灯った明かり小さき』と石川さんが短歌を紹介し、それを受けて早智子さんが『消すことなく大きくしたい』と言ったことを忘れられない。五月十三日に一部証拠が開示された。見えない手錠を外し完全無罪を勝ち取りたい」と主催者あいさつを行った。
 次に、飯塚さん(部落解放江東共闘会議事務局)が開示された三十六点について解説した上で、それが不充分なものであると述べ、「すべての証拠を開示させ事実調べを求めていく。司法制度の全面的な改革が必要だ」と提起した。
 続いて、狭山弁護団の小島好己さんが開示された三十六点の証拠について、詳しく意見を述べた(発言要旨、別掲)。その後、質疑応答が行われた。石川一雄さんは、ルミノール反応検査が不見当とされたが、斉藤保鑑定では「検査をやった、しょう油一滴でも二カ月後に調べても反応は出る」と証言している。さらに、石川さんは捜査段階で取り調べが録音されていたかどうか知らなかったが、自白前の録音テープはある。被害者のお姉さんが「その件知らない、知らない」と石川さんが何回も述べている自白前の十五分のテープを二回聴いた、と法廷で証言していることを明らかにした。

石川一雄さん
が決意を表明

 次に、石川一雄さんが「九月の三者協議では、必ず事実調べをやってくれると思う。多くの人が関心をもっている。せいいっぱい闘っていく。七十一歳になったとは思わない。毎日五キロ駆けている。精神的肉体的に四十代だ。無罪を勝ち取っておしまいではない。皆さんに恩返しがしたい。マグマのように闘っていく」と勝利にむけ確信をもったあいさつをした。

部落の子ども
たちから支援

 連れ合いの早智子さんが思いを語った。
 「布川事件再審裁判が水戸地裁土浦支部できょう始まった。傍聴に行ったが六百人くらい並び二十人しか傍聴できなかった。足利事件の菅家さんも来ていて、『次は狭山ですね』と言われた。再審の風が吹いている。布川事件でも被告に有利な目撃証言が隠されていた。証拠開示によって再審が始まった」。
 「昨年十二月から今年五月まで、毎日毎日不安でしめつけられる思いだった。石川さんは必ず開示されると思っていた。百万人署名の達成、弁護団の積み上げがあり、司法はまだまだ信じられるかもしれない。正義を信じていた。石川さんは強がりを言うが実は、二次再審が棄却された時は落ち込んでいた」。
 「三者協議の日、私たちは他の部屋で待っていた。十二月はすぐに出てきたのに、五月の時は三時半から五時まで出てこなかった。出て来た時は弁護団の表情が明るかった。実は五月十二日の狭山集会の時はすごく不安だった。『元気なかったね』と言われた。それでも三重県の子ども会が来ていて、石川さんといっしょに写真をとって送ってやった。そうしたら子どもたちから返事がきた。他のえん罪事件と違うのは子どもたちが支援に来ていることだ。部落差別がありそれに負けないという思いからだ。石川さんはいつも孤立していなかった。看守から文字を教えられたこと、部落解放同盟の支援があったことなど。必ず、再審を勝ち取る」。
 次に、集会決議を採択し、部落解放同盟江東支部の雨宮さんが閉会のあいさつを行い、再審実現に向けた集会を終えた。    (M)

小島好己弁護士の発言から
検察は36点を開示、しかし
隠されたものがあるはずだ

ルミノール反応
関連は「不見当」

 昨年の十二月十六日、第二回目の三者協議で、門野裁判長が証拠開示を東京高検に勧告した。門野さんは二月に退官ということもあり、正直勧告が出るとは思っていなかった。この勧告は画期的なものだった。牛乳瓶一本ほど被害者の血液が流れたとされる殺害現場でのルミノール反応(血痕反応)の捜査書類の提出を求めた。「本来あるはずだ」、もしないというのであれば、合理的に説明するものを出せと求めた。これは事件のカギを握るものという裁判所の考え方があるからだ。
 二月で退官した門野裁判長から岡田裁判長に交代した。岡田さんは官僚裁判官で良い経歴の持ち主ではなかった。検察に問い合わせても、次回の三者協議の五月十三日に出すかどうかも含めて明らかにするという態度だった。五月の協議で打ち切られるのではないかと、五カ月間非常に不安だった。
 当日、検察がテープと証拠の束を持ってきて三十六点を開示した。目撃者関係の捜査報告書、石川さんの筆跡、死体関係は不見当。肝心のルミノール反応は不見当、勧告のなかった取り調べの録音テープ九本を出してきた。

「自白」後の録音
テープしかない

 ルミノール反応について、見当たらないということは、合理的な説明がなく、検査しなかった可能性がある、ということを示すのか。二通りのことが考えられる。@そもそも作っていないA作ったけれど、どっかに捨てた。しかし、Aについては考えにくい。実はルミノール反応検査を行ったが血液反応がなかった。いろんなことが考えられる。
 「ないはずはないだろう、合理的説明をしろ」という門野裁判長の考え方を岡田裁判長も引き継ぎ共有している。
 再審開始にどうつながるか。「ここで殺したという自白の裏付け捜査をしていないことになり、自白をゆるがすものだ。自白だけではやったかどうか分からない。有罪立証が足りない。不見当というのはこちらにとって有利だ。
捜査段階の録音テープについて。捜査官と石川さんのやりとりだ。状態が悪い。ぶつぶつ切れている。非常に膨大なものだ。もどかしいテープだ。否認している段階ではなく、自白してからのものだ。否認している時期、出てこない。これで全部だと言っている。隠されているものを獲得することが重要だ。

証拠は検察官の
独占物ではない

 検察はこのテープの扱いに非常にぴりぴりしている。リールテープのものをDVDにしてきたが、それを複製してはいけないと言ってきた。今日、伝えることができないが、新たな補充書まで待って欲しい。非常におもしろく、興味深いものだ。材料として使える。
 検察は記者会見もやめてほしいと言ってきた。再審かどうか危機感をもっている。足利、布川事件と検察に厳しい結果になり、追い込まれている。狭山事件についても有利な状況にあり、風はこちらに向かっている。機を逃す理由はない。
 検討して足りないものを出させる。新証拠として請求する。運動として「証拠開示・事実調べをしろ」ということをつくっていくことが大切だ。世論の動向が裁判所に対して非常にプレッシャーになっている。検察はなおさらだ。検察の集めた証拠はみんなの税金でやったものだ。検察官だけが独占するものではなく、国民の目に触れさせる必要がある。有罪立証にだけ証拠を使うな。裁判官が判断する証拠を開示せよ。(発言要旨、文責編集部)



読書案内『低炭素経済への道』 
諸富徹/浅岡美恵著/岩波新書/720円+税
排出規制は新たな投資誘導なのか?


 著者は「温室効果ガス削減」が不可避の世界的課題であるという立場から、本書の中で、日本の環境政策を鋭く批判している。産業界や政治家たちの「過剰な温室効果ガス規制は日本の経済競争力を弱める」とか「日本のエネルギー効率は世界一であり、省エネ努力は限界に達している」などの主張に反論している。
 著者の主張は、地球温暖化対策を通じた「第三次産業革命」ともいうべき経済・社会システムの根本的転換の必要であり、化石燃料に依拠した成長システムから「低炭素経済」への移行を促進することにある。そして長期的な温暖化ガス排出削減目標から逆規定された排出総量{キャップ)規制に基づく国内排出量取引制度、環境税、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度などを駆使した「グリーン・ニューディール」政策による新しい経済社会を目的意識的に追求するという点で、米オバマ政権、ドイツ、イギリスなどの掲げているコースを高く評価している。こうした点から、既存の成長パターンに固執する日本の「温暖化対策」を批判している点で、本書には学ぶべき点が多いことは確かである。
 しかし本書の決定的な問題点は、こうした「低炭素経済」へのシステム転換について、あくまで資本主義の新しい成長・投資分野を開拓するものとして位置づけていることにある。著者たちは、生産拠点の海外移転をふくむ資本主義のグローバル化を所与の前提としてそれに対応するための政策として「低炭素経済移行プログラム」への移行を訴えているのだ。「進歩的な環境政策は、温暖化防止だけでなく、われわれの経済システムを大きく転換しながら、戦略的にグローバル化に対応するための産業政策としての色彩を濃くしていくことになる」との主張に、それは端的に示されている。
 ここではコチャバンバ民衆サミットで打ち出されたような、市場にもとづく資本主義の生産力主義、成長至上主義がいかに地球の自然環境と敵対的なものであり、先住民族をはじめとした「南」の世界の植民地化を再生産し、人間と環境の関係を破壊してきたかという批判は見られない。「低炭素経済への移行」は決して資本主義の新しい「成長」への手段ではないのだ。(恵)



コラム
「ワールドカップ番外編」


 多くのマスコミがワールドカップのカメルーン対日本戦の「興奮」に沸いていた翌朝、渋谷駅からバスに乗る。ハチ公前広場を一角に持つ道玄坂交差点付近は、昨夜の余韻を伝えるかのように垣根の小枝は折れ、踏み倒された跡が生々しく残っていた。しかし毎回毎回三千人とも四千人ともいわれる若者は試合終了と同時にどこから出てくるのだろうか。不思議でたまらない。勝ったといっては騒ぎ、負けたといってはわめく。まるで「湧き出す」という言葉がぴったり。それも昨日今日に始まったのではなく、二〇〇二年の日韓共催の時以来ずうっとである。テレビニュースで見る限り昨夜は終電前「結集」であったが、時には夜明け間近かの時間帯さえある。
 だがこの長年にわたる疑問はそれから十日程して偶然に解けた。その日も工事中の山手通りは交通渋滞でバスはほとんど進ます、耐えきれず途中下車。代々木から渋谷まで普通だと三十分とかからないが、裏通りを倍の一時間以上もかけて歩いた。午後六時半を過ぎてもまだ明るいがちらほらとネオンが灯り始め、普段見ている渋谷の街並みは違った顔を見せ始める。とくに盛り場と呼ばれるあたりは全く違う街に変わる。街路灯の明かりで見ると昼よりも渋谷の駅は谷の底に位置していることを実感する。ちょっと雨が降ると四方から雨水が駅に向かって流れるはずだ。
 気が付くとレストランといわず中華料理店も「日本―デンマーク戦」の予約受付の貼り紙を出している。風営法の関係で深夜営業が禁止されているはずの居酒屋までも堂々と張り出している。赤・白・緑の三本線のイタリア国旗を立てているレストランの貼り紙を紹介する。「ワールドカップ中の予約承ります!試合時間を挟んだ二時間で料金三千五百円、パスタ、ピザ、肉か海鮮料理の中から二品、飲み物、ワインかビール二杯」という具合である。二時間で二杯というのは私には到底がまんできそうもない。カラオケ店までも「予約受付中」「ドリンク一杯サービス」の紙を出しているのにはびっくり。
 ちなみに相場は三〜四千円で、私が目にした一番高い値段はNHKの近くにあるフランス料理店の五千五百円。その後、駅前の本屋に入ると表面に即席のスポーツコーナーがつくられサッカー関係の雑誌だけではなく、日本と対戦するカメルーン、デンマーク、オランダに関する本が所狭しと並べられていた。
 若者の「みんなで盛り上がりたい」という気持ちを利用してちゃっかり商売している。さすが「若者の街・渋谷」だ。警察が無闇やたら若者を排除できない理由もここにある。駅前にユニホームを売っているアシックスの渋谷店がある。この店は決勝戦の翌日には「南アの後はSAELに燃えろ!店内セール開催中」という店がかくれる程大きな看板を出していた。この商魂にはあきれてしまう。
 ワールドカップが開催される一カ月間世界中に大なり小なり「渋谷」が出現し、一方ではナショナリズムを煽り、他方では商売の武器として利用する。しかしこれは許される範囲だろう。ワールドカップの元締めFIFA(国際サッカー連盟)は、この「祭典」で数千億円を稼ぎ出し、放映権やスポンサー権をめぐり世界中の企業や放送局が暗躍する。まさにグローバル化したスポーツマフィアであり、一大イベント・巨大市場に他ならない。
 ワールドカップが終わり各地に大きな被害を残して今年の梅雨が明けた。暑い夏が始まる。(武)

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