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「天安艦」外交、宴は終わった              かけはし2010.7.5号

中・ロ慎重論で米国も一歩退く
膨らんでいた強硬策の風船に穴


 「天安艦」の「沈没」はイ・ミョンバク政府の安保政策の「沈没」だった。民・軍合同調査団の発表通りであれば、それは世界の海軍史に残る北韓(北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国)潜水艇の神出鬼没な作戦を見せつけもするけれども、警戒、情報、作戦、危機対応、指揮体系など、ほとんどすべての領域にわたって信じられないほどに脆弱な韓国軍の現実を何はばかることなく見せつけたのだ。


安保理決議「はなから無理」

 「天安艦外交」はどうか? イ・ミョンバク政府の「天安艦」外交は例えるならば、世論調査では勝っていていざ選挙結果では敗北した6・2地方選挙の軌跡をたどっているようなものだ。
 5月20日、調査結果が出てくると国際社会のメディアは圧倒的に北韓の挑発を糾弾した。香港の〈サウスチャイナ・モーニングポスト〉は米国が韓国政府を全幅的に支持する中で、中国が天安艦事件によって韓(朝鮮)半島問題につかまった状況であり、最大の外交的ジレンマに直面している、と語った。〈ワシントンポスト〉も中国の影響力に損傷を与えるだろう、と指摘した。
 5月24日、イ・ミョンバク大統領が戦争記念館で発表した国民への談話は、このような雰囲気から出てきたものだ。イ大統領はこの時期、天安艦外交にすがりついた。他の外部日程は一切、持たなかった。6月2日の選挙を念頭において破竹の勢いで押しつけた。5月24〜25日、米中戦略対話のために北京を訪問するヒラリー・クリントン国務長官を26日にソウルに招き入れ、29日の済州での韓中日首脳会談を契機に鳩山由紀夫日本総理の支援を受けるとともに、ウェンチアポオ(温家宝)中国総理を説得して北韓を圧迫する共同宣言を構築できるだろう、と計算した。
 これを背景として6月4日、シンガポールのシャングリラホテルで開かれた年次アジア安保対話で韓米国防長官会談を開き、西海(黄海)上での韓米連合訓練を発表して北韓に対する断固たる懲戒の意志を誇示し、イ大統領がシンガポールに行って国連安保理への回付(提起)を発表することによって、天安艦外交の終章を飾ろうとした。談話の発表を前後して米国、ロシア、日本、オーストラリアなどアジア・太平洋地域の主要首脳たちとの相次ぐ電話会談によって結束を固めただけに、地方選挙と同様に圧勝が予想された。
 だが、チョン・セヒョン元統一部長官が適切に表現したように、6月4日午前11時(韓国時間、5日零時)天安艦事件を国連安保理に回付する書簡を提出すると同時に「天安艦の宴は終わった」。安保理の制裁決議は、はなから無理となった。政府は拘束力のない議長声明にでも「北韓の挑発」を明示すればよい、と後退した。だがそれさえも簡単ではない状況なので、ひたすら心を砕いている様子だ。
 当初から先頭を切る考えはなかったものの、それでも後押ししてくれていた米国がへたりこみ始めた。イ大統領が安保理回付を発表した6月4日、ロバート・ゲイツ米国防長官はシンガポールで「国連による対北制裁がはたしてどこまで可能なのか分からない。効果があるのかも分からない」と語った。彼はキム・テヨン国防長官とシンガポールで会った後「国連から得ることのできるものをまず見守り、それ以降に次の措置を考えたい」と語った。
 そうして、準備不足を理由に6月8〜11日に西海で行うとしていた韓米合同軍事訓練を延期した。国防部は、この軍事訓練に米国の核推進航空母艦ジョージワシントン号(9万7千トン)が参加するだろうと流した。だが米国防部はこれを否認したばかりでなく、予告していた韓米国防長官の共同記者会見を取り消した。
 ゲイツ長官の6月6日の〈BBC〉会見は文字通り率直だった。「率直に言えば、北韓が自己の体制に対する外部世界の考えに神経を使わない限り、また北韓が自国国民の安寧に神経を使わない限り、ある時点で軍事力を使う意向がないならば、やれることは多くはない」。ひとことで言えば「韓国が安保理に回付して得るものは何か、北韓を圧迫して得られるものは何かが分からない」だった。
 〈AP通信〉が、天安艦沈没事件の20余分前まで、わずか75海里(約139km)離れた場所で韓国と米国が潜水艦を仮想敵と設定して追跡する対潜訓練をしていた、との報道をしたのはその後だった。それまで米国は天安艦に関しては韓国政府の方針を支持する発言以外には、いかなる具体的言及もしてはいなかった。だが6月6日、〈AP通信〉は米軍関係者たちを通じて対潜訓練の場所、参加艦艇、内容などを公開した。駐韓米軍代弁人であるジェイン・クライトン大佐は直接、この訓練が3月25日22時に始まり26日21時に終了した、と時間まで確認してくれた。
 イ・ミョンバク政府の天安艦外交は突然、米国によって、それも北韓に対して最も強硬な米国防部によって、穴の開いた風船のように空気が抜け始めた。米国の時事週刊紙〈ニュースウイーク〉は6月4日、ゲイツ国防長官が中国訪問をしようとして「玄関払い」を受けたのは米中関係の緊張を現しているとともに、天安艦事件が緊張を一層、高めていると指摘した。

北を圧迫して得るものは何か

 ゲイツ長官の発言の背景には中国があった。中国の党機関紙〈人民日報〉の国際版である英文〈ファング時報〉と英字紙〈グローバルタイムス〉は6月8日、1面トップで米空母(ジョージ・ワシントン号)が西海訓練に参加するなら南北間はもちろん、中国を含めた韓半島周辺の緊張を高めさせるだろう、と警告した。また香港の〈サウスチャイナ・モーニングポスト〉は「6月6日、韓国が天安艦の事態に対応する方案の一つとして3世代パトリオット・ミサイル(PAC3)を導入して米国主導のミサイル防衛(MD)体制に参加することを検討している」とし「これは中国の反発を買う恐れがある」と語った。
 中国はこのように米国を通じて、手綱が放れてしまったような韓国の強硬対応にブレーキをかける一方、ロシアと共同戦線を広げた。イ大統領が安保理への回付を公式発表した6月4日、ヤンジェツ中国外交部長の招請を受けたセルゲイ・ラブロフ・ロシア外務長官は北京で会談した後、こう語った。「ロシアと中国は韓半島が実質的に軍事的・政治的危機直前に来ていることを極めて憂慮する。天安艦沈没と関連した諸証拠は世界が必要かつ適切だと考える程度まで説明できるものでなければならない」。


強硬策を大統領ひとりで継続

 ラブロフ長官は北核6者会談に関連して「まだ、それ(6者会談)を話すのは余りにも早い」としつつも「6者会談の交渉プロセスが始まることは確信している」と語った。中国は天安艦の事態以来、一貫して「韓半島の平和と安定を守ることがすべての関連国の利益に符合するとともに、6者会談を速やかに開くことが必要だ」との態度を堅持してきた。米国の内情も中国と異ならない。
 5月26日、ソウルに寄ったクリントン米国務長官は記者会見で「北韓の好戦性や挑発行為に目をつぶっていてはダメだ」として安保理への回付支持と北韓の責任を問う追加的対応を検討する、と語った。だがヒラリー長官は5月24〜25日の米中戦略対話で「(韓半島の平和と安定は)米国と中国の共同責任」ということに合意した。クリントン長官のソウル記者会見も強調点をどこに置くのかによって、そのメッセージは異なる。同長官は発言の最後の場面で、こう付け加えた。「天安艦沈没という即時的危機は極めて強いけれども、計算された対応策が必要だ。より長期的に北韓の方向を転換する戦略も必要だ」。
 それにもかかわらずイ大統領は天安艦の問題解決なしには一歩も踏み出すことはできないという姿勢を示した。彼は6月4日、シンガポール〈ストレイツタイムス〉との会見で「天安艦の事態解決なしには6者会談も成果を挙げることはできない」と語った。
 イ大統領は5月24日、国民への談話で「国際社会の責任あるいかなる国も天安艦の事態が北韓によってほしいままになされたことを否認できなくなった」と語った。その言葉は今、否認されている。それは現実の情勢に対する無知とごう慢が自ら招いたものだ。沈没したのは天安艦だけではない。〈「ハンギョレ21」第815号、10年6月21日付、カン・テオ記者/ハンギョレ(新聞)国際部門〉

【訂正】本紙6月28日号4面「ストップ!大企業減税・消費税増税」記事1段目の中見出しから5行目「自民党」を「民主党」に、下から3段目の中見出し「日本の法人税はは高いのか?」を「日本の法人税は高いのか?」に、4面「BOX袴田事件 命とは」の最後から8行目「熊田」を「熊本」に、6面「ラテンアメリカにおける新たなパワーバランス」の執筆者名「ハージニア」を「バージニア」に訂正します。

先週、我々はとても古くなった幻の安保の実体を見た

 安保とは軍の絶体絶命の使命だと思っていた。酒を飲んでいようが「安保の危機」という言葉を聞きさえすれば、パッと正気に返るほどに重大な至上の任務だと思っていた。ところが6月10日の、天安艦の事態についての監査院(注)の監査結果を見て、このような幻想はさっぱりと消え去った。天安艦が沈没した日の夜、陸海空3軍を指揮する合同参謀本部議長は泥酔し、一時期、指揮統制の役割を果たせなかったのだと言う。事故発生の時刻や原因などについての報告や対処の過程で、でっちあげや漏れ、遅れが幅を利かせた。熱状監視装備(TOD)の動映像を編集・発表して国民を欺きもした。軍が強調してきた安保というものは、はたして何なのか、その概念をとらえることができなくなる。
 安保は、いわゆる保守勢力のかけがえのない「お守り」のようなものだと思っていた。安保に害を及ぼす勢力には誰よりも断固たるのが彼らだと思っていた。ところが監査院の監査に現れた軍の支離滅裂の姿に対して彼らが示している態度を見て、このような幻想がさっぱりと消え去った。「監査によって現れた軍の異常」について「厳正な人事に改めよ」とだけ言う。(〈朝鮮日報〉6月11日付、社説)。「軍の総体的綱紀の弛緩に冷や汗があるありさま」としながら注文するのは、たかだか「迅速かつ果敢な問責人事」だけだ。(〈中央日報〉6月11日、社説)。いわゆる親北・左派がつくりあげる「莫然たる」安保への脅威に対しては呪いにも似た断言を降り注ぎ劇薬処方を求めていた彼らが、いざ「実際的」安保の危機を招来したことが判明した軍に対しては余りにも落ち着いた対応をしている。彼らが好んで口にする安保というものが何なのか見当もつけがたい。

でっちあげや
漏れ・遅れが

 〈ハンギョレ21〉去る5月に民軍合同調査団の調査結果の発表が出てきた後、812号の特集で「責任者を処罰せよ」と要求した。合調団の発表内容通りならば軍は警戒、作戦、事後収拾などすべての側面において失敗しただけに、応分の処罰を受けなければならない、との主張だった。キム・ファンシク監査院長がこのような主張に応じて答えた。彼は6月11日の国会・天安艦真相調査特委に出席し、「問題が現れた軍指揮部12人に対して軍刑法上の刑事責任があり、国防部に処罰の必要性を検討せよ、と通告した」と語った。
 監査院長までがこのような判断をしたのならば、安保の化身のごとくにふるまってきた軍や保守勢力の、かの生ぬるい態度は一層、理解しがたいものとなる。その上、キム・テヨン国防長官は、この日の特委で「監査院の監査結果をそのまま受け入れるには適切でない部分がある」として細々と反論を試みさえしたのだから、今や監査院の監査結果でさえ迷宮入りを謀ろうとするのではないのか、心配になる。
 このような一連の事態を見守りつつ、一層確固となる考えは、もはや軍を信頼しがたいということだ。808号で提案した「軍に対する民主統制」が一層、切実になる。また軍が主導した天安艦沈没事件の原因調査も、ありのままに受け入れるのが一層、難しくなった。よくある陰謀論をよみがえらせようというのではない。いかなる先入観も排除するが、客観的事実に基づいた「科学的疑問」が提起されるときには徹底してつきつめてみるべきだ、ということだ。
 幻影の安保にとりつかれ、真の安保に向けた歩みをかき乱すことはできない。天安艦沈没の原因に関連して、今号の特集で提起している新たな問題も、そのように真実に向けて大きく踏み出す一歩というわけだ。(「ハンギョレ21」第815号、10年6月21日付、パク・ヨンヒョン/編集長)

注 大統領直属の政府機関の一つ。国家の歳入、歳出の決算および公務員の職務に対する監査などの事務を担当。


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