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事故隠し、プルサーマル、核廃棄物……       かけはし2002.10.21号より

追いつめられて暴走しはじめた日本の原子力行政


 十月十八日の臨時国会の開会を前に、原子力安全規制体制の改革をめぐっての動向が加速している。
 今月十日、木村青森県知事、福田康夫官房長官、細田博之科学技術政策担当相、平沼赳夫経済産業相、渡海紀三朗文部科学副大臣、藤家洋一原子力委員長、藤洋作電事連会長らが出席して第五回核燃料サイクル協議会が非公開で開催された。この会議で青森県が求めたのは、@原子力安全・保安院の経済産業省からの分離・独立A原子力施設立地県の立場を法制度上明確にすること、などと報道されている。東奥日報では「経産省は保安院の分離に難色を示しているが、政府側は独立性を強める方向で組織の在り方を見直す姿勢を示し`落としどころaを探るのではないか―との観測もある」としていた。
 木村知事は使用済み核燃料輸送容器のデータ改ざんなどを理由に、一九九八年と〇一年に使用済み核燃料の六ヶ所村再処理工場への搬入を中断させており、国に要求をのませるために協議会で`伝家の宝刀aである港湾の管理権をちらつかせたのではないかとの憶測も流れている。
 このためか、「経済産業省は十一日、原子力安全規制を担当する原子力安全・保安院の独立性強化に向けた検討に着手……中略……、経産省設置法で、保安院は資源エネルギー庁の下に置かれているが、同法を改正し、同庁と同じ外庁にする構想が浮上している。……中略……、保安院をエネルギー庁から組織的に分離し、エネルギー庁と同格の外庁に格上げすることを軸に、設置法の規定見直しに着手した。同時に他の官庁との人事交流のあり方や、予算・情報管理などの事務取扱規定などの見直し作業も開始した」(毎日新聞10月12日)。
 原子力安全・保安院は、東電不正発覚をきっかけに発足したいわゆる「佐藤委員会」の中間報告の最終とりまとめを待たず、この八日にあろうことか佐藤一男前原子力安全委員長を委員長とした「原子力施設安全情報申告調査委員会」をスタートさせた。「申告」とは内部告発のことだが、九人の委員のうちなんと八人を「佐藤委員会」と「近藤委員会」の委員が占めているという有様だ。
 「佐藤委員会」の中間報告案では、「保安院が行う調査を監査・監督し、指導・助言する機関として、外部有識者からなる申告調査委員会を十月中を目途に立ち上げる」としているが、保安院の東電不正調査についての評価を行っている委員を、保安院自身が非常勤の特別公務員として任用するというめちゃくちゃぶりである。
 もちろん「近藤委員会」もまだ、中間報告の最終とりまとめを行っていない。JCO事故後には`安全文化aや`技術者倫理aが推進側から持ち出されたが、官僚や族学者の文化や倫理の水準はJCOや東電を決して越えるものではない。
 一方、電力会社サイドでは、十五日の東電の社長交代を待ち、十八日に「電気事業連合会は、原子力発電所のトラブル隠しなど相次ぐ不祥事で失った信頼を回復するため、各社の社長をメンバーとした検討委員会を設置(NHK10月14日)」、十一月中にも報告書をとりまとめを行うという。
 また朝日新聞は十月十四日、「原発の検査強化を打ち出した経済産業省原子力安全・保安院は、その第一弾として、十五日から福島第一原発六号機で厳格化した新検査を実施する。東電に対する行政措置の一環で、来年から導入予定の監査型検査などを前倒しで採り入れる」と報じており、損傷原発の運転再開が日程に上りつつある。
 国会を中心とした原子力規制のあり方をめぐった攻防がはじまろうとしている。原発現地を中心として、損傷原発の運転再開を阻み老朽原発の廃炉をかちとる闘いにより多くの住民が結集しつつある。十月二十六日を中心に各地で繰り広げられる「反原子力の日」の行動、あるいは青森県庁と総理大臣官邸で行われる予定の「再処理とめよう!全国署名」の提出行動に結集し、脱原発への取り組みを強めていこう。
 十月二十六日は、日本が国際原子力機関(IAEA)憲章に調印した日(一九五六年)と、日本原子力研究所の動力試験炉(JPDR)が日本で初めて原子力による発電に成功した日(一九六三年)にちなみ、翌六四年に「原子力の日」として閣議決定された。推進側は毎年この日を中心として、各地においてさまざまな行事を行っており、これらに対抗して原発現地をはじめ各地で「反原子力の日」の行動が行われている。石油関係労働者を中心に組織されている反原発労働者行動実行委員会は、約二十年にわたって毎月二十六日に通産省・経産省前で反原発のビラまきを続けている。
 IAEAはイラクや北朝鮮の核査察など、核兵器の拡散を防止する活動の一方、既存の核兵器保有国の権益を守るという差別的役割を担ってきた。非核兵器国でありプルトニウム利用政策を続ける日本が最も多いIAEAによる核査察を受けている。プルトニウム国際輸送に反対する大衆運動によって、政府はようやくプルトニウム在庫量などを公表するようになったが、福田官房長官発言にみられたように、国連の常任理事国化など、ことあるごとに政府高官は「法的に核兵器を保有することは可能」と、核武装への意欲をのぞかせている。
 国際的に特にアジアのなかでは、日本のプルトニウム利用政策が核武装の危険性として認識されてきた。反原発運動や被爆者運動の中で、あるいは反戦運動などの中で「原子力の平和利用と核武装」の問題に十分な議論がなされてきたわけではないし、逆に`タブーa扱いされ、議論することが運動の統一性を阻害してきた側面もあったろう。
 槌田敦さんや藤田祐幸さんらが、動燃東海のリサイクル機器試験施設(RETF)に対し、動燃大洗の高速増殖実験炉「常陽」でつくられた高純度のプルトニウムを分離することから、`核武装の条件づくりaとキャンペーンを行ってきたが、原水禁国民会議などでは「日本が核武装を行う情勢ではない」などとしてキャンペーンへは非協力であった。
 大衆的には運動の主導権争いとも映り、チェルノブイリ以降さまざまな角度から「核のない未来」を展望した運動にとって、決してプラスにはならない議論に終わっていると言えるだろう。有事法制をめぐっての大衆運動の高まりに比べ、残念ながら「核のない未来」に向けた運動に高まりがみられないのは事実だ。アジアの仲間と「核のない未来」をともにつくるため、まず日本の核技術が客観的にどうなのかの検証からはじめてもよいだろう。
 「米原子力規制委員会(NRC)はテネシー渓谷開発公社(TVA)に対し、核戦略上の重要物質であり、水爆の核融合反応に欠かせないトリチウムの製造免許を与えた」と九月二十五日の共同電は伝えている。トリチウム生産専用施設が老朽化したため、アメリカでは八八年来トリチウムの生産は中断してきた。今回の計画は、「TVAのワッツバー原発(テネシー州)の原子炉内で、リチウムを原材料にし、核分裂で出る中性子を当てトリチウムを生産する」と伝えられた。原発とは当然`発電所aのことだ。分離技術はともかく、政治的意思さえ固まれば、日本の原発でも容易にトリチウムが生産できる。
 また、高純度のプルトニウムも日本の原発で容易に生産できる。語弊があるが、生産できるというより、一定の期間は高純度のプルトニウムとして少量が出来上がっている。原発でウラン燃料を燃やすと、核分裂しないウラン二三八が中性子を吸収し、核兵器材料のプルトニウム二三九となる。原発内ではこの一部が核分裂し死の灰となるが、一部はふたたび中性子を吸収し、核分裂しにくいプルトニウム二四〇となる。こうしたことが繰り返され、やがて核兵器材料としてはプルトニウムの純度が落ちていく。
 安全性を抜きにすれば、日本ではプルトニウム分離技術と施設をすでに東海村に保有しており、あらたな施設がなくとも、意思さえあれば核兵器級のプルトニウムを所持することが可能だ。RETFはもんじゅ事故により、機器の設置が中断されているが、再処理工場はアスファルト固化施設の爆発事故以降、運転再開されている。核弾頭の設計は、現在のスーパーコンピューターによれば核物質の必要量を入手するよりはるかに短時間であろう。
 こうした論議はアジアの仲間だけでなく、アメリカ国内で「核のない未来」をめざす仲間とともに、ブッシュ政権を追い詰める力となるだろう。
 九月二十九日、原子力発電環境整備機構(NUMO)は新聞各紙に、お母さんの指を握っている赤ちゃんの写真に「『電気のごみ』を子どもたちに先送りしないために」という全面広告を掲載した。これはNUMOが高レベル放射性廃棄物の地層処分に理解を求めるためのものだ。NUMOは二年前に制定された「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」により、高レベル放射性廃棄物の最終処分事業を主体的役割を果たすことを目的に設立された。 スケジュールでは、今年度中にも最終処分地の公募を開始し、文献調査、ボーリング調査、地下調査を経た後に、およそ二十年後を目途に最終処分地を選定するという。
 高レベル放射性廃棄物は使用済み燃料を再処理し、プルトニウムと燃え残りのウランを分離して残った死の灰のこと。もちろん『電気のごみ』を子どもたちに先送りしてはならないが、『電気のごみ』は高レベルばかりではない。原発の解体、あるいは大規模な修理により発生する廃棄物は膨大だ。その処理・処分方法が定まらないままだ。国や電力会社は、『電気のごみ』を汚染度合いで仕分けをし、その基準を低い水準にし、「高いものは処分」するが「低いものはマテリアル・リサイクル」しようと、法令の改悪・整備を目論んでいる。このスソ切りに対しては「放射性廃棄物スソ切り問題連絡会」が結成され、リーフレットが作成されている。スソ切りを許せば、原発の廃材から、なべやフライパンが作られるかもしれない。
 六ケ所再処理工場を稼動させ、プルサーマルを実施するということは経済的負担も後世まで残すことになろう。技術評論家の桜井淳は「米国のように核燃料のワンスルー方式に比べ、再処理・プルサーマル方式は、年間当たりひとつの原子炉で百〜二百億円割高になるのである。東京電力がすべての原子炉でプルサーマルを実施すれば、年間千七百〜三千四百億円の損失になる」とホームページで試算を公開している。
 日本の電力体系は、発電・送電・配電のほとんどを九つの電力会社で地域分けをした、国際的にまれな体系が続いてきた。地域独占のため、発電施設や送電施設の規模を巨大化することが経営効率を高めるものとの信仰がまかり通ってきた。現在進行している電力自由化の中で、巨大な投資を必要とするこれまでの電力事業者のあり方は不利なものとなりつつある。こうした状況は原発の新規立地や増設にとってブレーキとして機能していくだろう。
 「百万KWの原発を止め火力で代替すると、一日あたり一億円の損失になる」と勝手な計算結果を大衆に押しつけている。だが、電力会社や経産省は計算の根拠となる数値を公開はしていない。運転再開に向け、推進側はこれまでと同様にデータの隠匿、情報操作によって切りぬけようとするだろう。冬の電力需要の増加前、この秋の臨時国会での法令の改悪を阻む闘いと運転再開を許さない闘いはきわめて重要だ。
 冒頭で記したように、小泉政権は木村青森県知事の要求を早々と受け入れる姿勢を示し、知事の面子を立てることで、六ケ所への使用済み核燃料の搬入を継続させようとしている。
 「電気事業連合会によると、今年三月末現在で国内原発にたまっている同核燃料は合計九千九トンで、全容量に占める割合は六二%。搬入がストップしたとしても、当面は危機に陥る状態ではない。だが、中には中部電力浜岡(九二%)、東京電力福島第二(九〇%)など満杯に近い原発もあり、搬入拒否が一年以上長期化すれば、操業に影響が出る可能性も否めない。……中略……、同工場は現在、原発トラブル隠し問題の影響で化学試験に着手できずにいる状況。試運転開始が大幅に遅れれば、二〇〇五年七月の本格操業開始がずれ込むことになる」(デーリー東北10月11日)。
 来年一月末から二月には青森県知事選挙が行われる。「再処理とめよう!全国署名」の成果を反核燃知事誕生に向けた運動に広げていこう。
 また、来年四月の統一地方選では、新規立地をめぐって重要な局面を迎えている山口県上関町をはじめ、多数の脱原発選挙が行われる。地域から脱原発を実現していくため、「再処理とめよう!全国署名」と各地の「一〇・二六反原子力の日の行動」を成功させていこう。(10月14日斉藤浩二)

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