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                         かけはし2002.10.21号より

米英のイラクへの戦争はクルド人に何をもたらすか

サラー・パーカー


 ブッシュ政権はイラク・フセイン政権を打倒しようとする戦争計画に、クルド民族の独立運動を利用している。しかしこの戦争がクルド独立国家樹立に結びつく可能性は全くない。すでにNATOの一員であるトルコは、クルド国家阻止のために数百人のトルコ軍部隊をイラク北部に投入している。



 この八月、イギリスの「難民申請者連盟」の中でイラクからの人びとの数が再びトップとなった。新しくやってきた人びとのほとんどはクルド人である。他のイラク人が出国を望んでいないためではなく、南部や中部に住む人びとにとってはイラクからの出国がより難しいためだ。
 最近やってきた難民の一部は居住が認められたが、多くは認められていない。彼らは内務省によって非常にひどい取り扱いを受け、レイシズム(人種差別)の被害を受けることもある。
 欧州のすべての政府は、戦争が終わったらできるだけ多くのイラク人を追放するという願いを明確にしている。
 ここ数年、クルド人たちは南クルディスタン(イラク北部)から流出している。
 彼らは情勢の不安定と貧困、西側の同盟者であるクルド愛国同盟(PUK)とクルディスタン民主党(KDP)が支配する独裁体制、そしてサダム、イラン、トルコによる民衆の安全に対する危険からの脱出を強制されているのだ。戦争という来るべき脅威は、すでに悪くなっている情勢をさらにひどいものにしている。
 いまブッシュは、イラクの民衆に対する彼の人殺し戦争を覆い隠す試みの一部として、自分はクルド人を助け、イラクに民主主義の光をもたらすことを望んでいると主張している。しかし一九八八年にサダム・フセインが、ハラプチャで千五百人のクルド人を殺害した時、アメリカとイギリスの反応は無関心だった。当時両国は、イランとの戦争でイラクを支持していたからである。そして、いずれにせよクルド人たちが、アメリカが次にバグダッドに打ち立てる政権によって弾圧されるという「支援」を受けるのが、ありそうなことなのではないか?
 一九九一年のイラク戦争の終了時、KDPとPUKの支配下で、南クルディスタンに「安全地帯」が創出された。それは、この地域のクルド人の生活の矛盾に満ちた状況として帰結した。
 この地域でのバグダッド体制の相対的不在が、生活条件、自由、教育の一定程度の改善を可能にしたことは事実である。
 たとえば、以前はイラク政府によって、そしてもちろん北クルディスタンではトルコによって妨げられていたクルド語の使用は、かなりの程度自由である。しかしPUKあるいしKDPを支持しないかぎり、社会主義者やクルド民族主義者はいまなお安全ではない。

 一部のクルド人民は、来るべき戦争の後でクルド人としての実在が存続することを認められるだろうと計算している。彼らが、サダムを取り除くためにこの戦争を支持すべきだと主張する根拠がここにある。
 PUKとKDPの指導部がアメリカの戦争計画に寄り添っているのは、おそらくこうした理由による。しかしそこには真の危険が含まれている。全体としてのクルド人は、周辺のアラブ諸国によって、アメリカとイギリスの手先として見なされる可能性がより高まるという危険におちいるだろう。
 彼らの国土の一部は、アメリカによってすでにイラクへの通路として使用されている。PUK、KDP双方の領域にある南クルディスタンで、アメリカは十二の滑走路を建設している。この領域が切り取られるのは不可避だろう。またイラクの至るところにクルド人がいるが、彼らはイラクの住民とともに戦争で殺されるだろう。多くのクルド人が戦争に反対しているのはそのためであり、またかつて部外者の指示を実行した彼らの指導者の悲劇的な結末を見てきたためである。彼らは、連合国の侵略者によるものであれ、イラク、トルコ、イランの軍隊によるものであれ、爆撃あるいは地上戦闘で非常に多くの人びとが被害者になるという運命におののいている。
 トルコは、現在のクルド人の存在が国家の地位の獲得に向けて発展する可能性にきわめて敵意を持っており、それがトルコのクルド人の闘争、そしてクルド人一般の民族的熱望を押し上げることを恐れている。
 クルド労働者党(PKK)は武装闘争を放棄し、平和的な運動の方法を選択したかもしれないが、PKKもクルド人民もクルド人の権利を勝ち取る決意を放棄したわけではないことを、トルコは知っている。またトルコは、オスマン帝国崩壊の時に失ったモースルとキルクーク(重要な石油資源の埋蔵地)をイラクから取り返したいと思っている。
 したがって、南クルディスタンのさらに多くがトルコによって永久占領されるという深刻な危険が存在しているのである。この地域の住民にとって、そうしたことはそれ自身として悪い話だが、もしアメリカやイギリスやトルコがイランの利益に反することを強行するとイラン政府が感じ、南クルディスタン全域、さらにはおそらくはイラク内部にまで戦争が拡大することになれば、イランがいっそう引きずり込まれることになる可能性も存在する。
 イラクに対する戦争は、イラクの他の民衆にとってと同様に、クルド人民にとっても悪いニュースなのだ。(英「ソーシャリスト・レジスタンス」02年10月号)
(本紙編集部注:「ソーシャリスト・レジスタンス」紙は国際社会主義グループ〔ISG、第四インターナショナル・イギリス支部〕と社会主義連帯ネットワークが共同で発行を開始した新しい新聞)


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