かけはし重要記事

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                         かけはし2002.11.11号より

希望をグローバル化するために闘いをグローバル化しよう

10・29ジョゼ・ボベさん歓迎東京集会での講演から


農業破壊するWTOの論理

 皆さんが日本で経験されている状況は、フランスでわれわれが経験している状況でもありますし、それから南アメリカ、アフリカの農民たちが経験している状況と同じです。
 この論理は、農民を土地から追い出すことであり、食品の質を悪化させることであり、環境を悪化させることです。こうした帰結をもたらす理由は、今日、一つの名前を持っています。それはほかならぬWTOです。
 今日、WTOが行おうとしていることは、農民による農業を破壊して、多国籍企業のアグリビジネスに道を開こうとする政策です。さらに、それぞれの国が自らの農業でもって生き続けることを阻害することです。
 WTOが行っていることは、国境を開き、そして必要がないにもかかわらず、それぞれの国が食糧を輸入しなければならない状況に追い込むことです。つまり、それぞれの国がコスト以下の値段で食糧を輸入するということを強制しているのです。だいたいの国が自分たちの食糧を生産できるにもかかわらず、グローバルプライスを設けることによって食糧を輸入させることなのです。
 このことによって利益を受けるのは、ひとにぎりの食糧輸出国と多国籍企業のみなのです。さらに、さまざまな国に関税障壁を低くすることを強制しています。そして、自らの国の農業を支えることを禁止するわけです。
 この論理は、一九八六年、ガットのウルグアイラウンドの枠組みの中で決定されました。WTOの設立と共に、このプロセスは、さらに加速されたわけです。今日、行われているのは、それぞれの農業生産を破壊すること、そしてダンピング価格で生産される食糧を輸入させるということです。
 こうしたことは非常に破局的な結果をもたらします。その被害者となるのは単に農民だけではなく、消費者も被害者となり、環境も被害を受けます。ただし、最初の被害者となるのは農民です。農民は自らの道を手放さなければならないのです。農業政策が破壊され、農民たちの収入も破壊されているわけです。彼等が生産し続けることを許してはくれないのです。
 農民の収入を補助する政策は、WTOのルールによって禁止されています。ところがアメリカとかヨーロッパの一部の国では、環境に対する援助だと称して実は補助金が支給されていて、それによってダンピング価格で輸出が可能になっているわけです。
 昨年、アメリカは、農業補助金を七〇%増額しました。そして並行して、他の国々に対しては農業に対する補助金を減額せよとか、あるいは関税障壁をなくすことを強制するわけです。
 アメリカがこうした農業製品を売る目的は、地球に対する帝国主義的な支配にほかなりません。これは、食糧援助という形でも行われています。食糧援助というのは、輸出の偽装された形にほかならないのです。

「食糧主権」という考え方

 今日、こうしたシステムを変えなければならないということです。さもないと農民たちは消滅してしまいます。食糧主権という考え方が必要です。つまり、自国の生産品でもって自国の人々を養う権利です。これはすべての民族にとって失うことができない権利です。
 世界の労働人口の五〇%以上は、農民です。ところがWTOの目的は、この農民の大部分を消滅させ、一握りの多国籍企業に食糧生産をまかせるということにほかなりません。この政策は、この地球という星の均衡にとって自殺的な政策です。そこで余った農民をどうしようとするのでしょうか。五千万人、あるいは一億人の都市を作って、そこに収容しようとするのでしょうか。
 中国はWTOに加盟しました。これはどういう帰結をもたらすのでしょうか。今わかっていることは、今後二億五千万人の農民たちが離農しなければならないということです。ところが現時点で、すでに一億八千万人の元農民たちが、住むところがないような形でさまよっているわけです。
 われわれは一つの選択に直面しています。私の農民としてのそして農民組合員としての選択は、次のようなものです。すなわちWTOが農業から出ていかなければならないということです。今日われわれは、それぞれの政府を相手にして闘わなければなりません。政府を大きな議論に引き込まなければならないのです。

人民の選択権が奪われている

 非常にスキャンダラスなことがあります。それはフランスでも、日本でも、そしてアメリカでも、市民がWTOに関する問題について発言権を持っていないということです。われわれに自由貿易が強制的に押しつけられています。押しつけられているその通商ルールに関して、われわれには選択権が一切与えられていません。市民どころか、議員も発言権を持っておらず、WTOの枠内で限られた政策にだれも異議をとなえられないわけです。
 WTOという極めて非民主的な組織が地球の未来を、農民の未来を、そして市民の未来を決定してしまうということ、これは受け入れがたいことです。
 賃金労働者に関しても同じことが言えます。社会的ダンピングの構造が作られてしまって、賃金労働者は解雇されてしまいます。そのかわり組合権などを全く持たないような労働者が雇用されるという状況が見られるわけです。
 現在の支配的な論理は、規制緩和です。つまり、社会的な保護として構築したもの一切を破壊する論理です。それによって市民、農民たちも被害を受けています。WTOが目指していることは、弱者を増やすことにほかなりません。
 WTOは一九九五年に設立されました。それ以来、豊かな人々と、貧しい人々との間の格差というものは、これまでになく増大し続けています。また、資本の集中も、これまでになく一つのところに集中しています。
 例えば、世界でもっとも豊かな三人の株主、つまり巨大企業のオーナー三人の収入は、六億人が住む最貧国の四十カ国の国内総生産を足したものを上回っているのです。
 WTOの政策は、いったいだれのための政策なのかということを問わなければなりません。世界中でますます多くの人々が立ち上がって、支配の論理、そして商業化の論理に立ち向かっていかなければなりません。こうした流れを提唱することは、単なる選択の問題ではなくて、義務の問題になっています。
 今日、脅かされているのは、単に社会的な均衡不安ではありません。それどころか人類共通の財産そのものが脅かされています。
 例えば、水がそのケースです。水はすでに商品になっています。商品でないとき、それは汚染されている危険があるわけです。フランスのビバンディという会社は、世界の水の商業化を虎視たんたんとねらっています。ビバンディは、水という資源がますます希少化することを見通しているのです。大気も脅かされています。
 この地球の健康は、石油化石燃料が浪費されたために脅かされています。土壌も例外ではありません。汚染するものは、工業的な農業である場合もありますが、過度な工業化といったことがあります。何百ヘクタールの土壌が汚染され、そしてコンクリートとか、コールタールによって汚れてしまっているわけです。

生命体を特許化する多国籍企業

 いま、最終段階として脅かされているのは、生物多様性の破壊という問題です。今日、ブラジルとかアジアでは、木材に対する投機的な目的のために、森林が脅かされています。それによって多数の動物種、植物種が脅かされています。それ以外に、工業化によっても生物多様性が脅かされています。
 今日、WTOによる生物多様性の破壊の非常に皮肉な最終段階は、生物多様性を特許化するということによっていわば人質にとってしまうということです。生物多様性に対する一種のホールドアップという事態です。それは巨大な製薬メーカー、農業メーカーによって行われています。
 こうした生体の特許化は、単に植物や動物のゲノムの特許化だけではなく、人間のゲノムを特許化して私物化することもねらっているのです。まるでSFのようだとお考えになるかもしれませんが、そうではなくて現実です。例えば、オーストラリアの製薬メーカーが人間のゲノムを買って、それを操作して薬品を開発しようとしています。
 生命体の自由化のひとつが遺伝子組み替え作物です。このような植物に対する特許を通じて、多国籍企業の四社ないし五社が世界中のすべての種子管理を牛耳ろうとしています。
 従来は農民が自分で収穫し、またその種をまくということを行ってきたわけです。ところがこの特許化の論理を通じて、毎年企業から種子を買わせるということをねらっているのです。
 多国籍企業にとってがまんならないことは、土の中で種というものが、再びできてしまうことです。したがって生命体に対する特許化は、多国籍企業による農民に対するホールドアップだと言えます。
 例えば、ろうそくのメーカーがあったとしましょう。ろうそくのメーカーがもっともうけるために、日本の住民全員に対して、絶対に窓を開けて光を入れてはならない、窓をしめていなければならないと言ったのと同じだと思います。というのは太陽の光は、ただだからてす。
 現在の状況は、禁止されたにもかかわらず窓を開けて太陽光を入れてしまった人が、ろうそくメーカーによって訴えられるということになっています。 
 まさにこれが遺伝子組み替え作物とともに起こっていることです。特許があるがために、農民はもはや自分の畑で収穫した種子を翌年にまくことができない。もしまいてしまうと、それは特許侵害だとみなされるわけです。
 アメリカ合衆国とカナダでは、五百人以上の農民がすでにモンサント社によって訴えられています。確実に自分のところの種子を買ってもらうために、モンサント社は私立探偵を雇って、だれか自分のところで収穫した種をまいていないかどうか確認したり、無料の電話番号を設けて、隣の農家がまいたというように告発を奨励したりしているのです。
 さらに、遺伝子組み替え作物でない作物を育てていた農場で、遺伝子組み替え作物が混ざってしまったということがありました。そして、畑から採れた種子をまいたところ、遺伝子組み替え作物の種が混じっていたためにモンサントは侵害であるとして訴えたのです。

遺伝子組み替え作物拒否を

 ここで非常に根本的な闘いに直面していると思います。農民にとっての最初の独立、自立性は、自分の畑で収穫したものを、再びまけるということです。
 こうした遺伝子組み替え作物は、健康にとって、環境にとって、大きな危険を形作っています。
 今日、遺伝子組み替え作物の九五%が除草剤に抵抗力を持った植物です。除草剤に抵抗力を持っているということは、除草剤で死なないで、その除草剤を吸収しながら育っていくことになるわけです。そうなると除草剤を吸収した植物を食べた動物、あるい人間、そうした生物が、汚染されてしまうわけです。
 多国籍企業は、世界中で飢餓をなくすためとか、環境の改善に役立てるために遺伝子組み換え作物を作るんだということを言っているわけですが、それとは全く逆のことが起こるのです。むしろこうした企業がさらに多くの除草剤を売るために、このような種が開発されていると考えていいと思います。
 今日、こうした商品化に抵抗すること、そして農民の大地の自由と種子を守ることは、フランス、ヨーロッパ、日本、アメリカ、南アフリカ、アジア、すべてに共通な闘いだと思います。いくつもの国で人々が立ち上がって、農民だけではなくて市民も遺伝子組み替え作物に対する闘いを展開しています。
 遺伝子組み替え作物がこの国に入ってきて広がることを妨害するのは、非常に重要だと思います。この遺伝子組み替え作物は、今日の農業と共存することを許さない。遺伝子組み替え作物は、拡散されることによって、しだいにその種全体を汚染してしまいます。そのような意味で、他の共存を許さない遺伝子組み替え作物は、全体主義的な農業だと言えます。
 したがってこの遺伝子組み替え作物に関しては、最大限の透明性を求めなければなりません。そして、国家に対して、どういう形で試験が行われているのか、ある作物や肉なりの製品がどこで、どういうふうに作られているのかを確認するような取り組みも必要です。さらに、業者に対して遺伝子組み替え作物を使っているのか、使っていないのかの明解な表示を求めることが必要です。
 このような作物の実験が、普通の畑で行われるということを妨げなければならないと思います。こうした闘いを私たちは、ヨーロッパで行い、かなりの成果を上げました。一九九二年には、多国籍企業による妨害にも関わらず、遺伝子組み替え食品の延期を求める政策がとられました。一カ月前には、新たな遺伝子組み替え食品を市場に流出させることを禁止した措置がとられました。フランスでは現在のところ、一ヘクタールたりとも遺伝子組み替え食品が作られている畑はありません。

農民・消費者・環境の権利を

 私は、このような闘いの中で違法とされる行為を行いました。その行為を通してわれわれは、農民の権利、消費者の権利、環境の権利を主張していきたいと考えています。われわれは、テスト中の遺伝子組み替え作物を破壊したりしました。それから種子を混ぜてしまって、使用が不可能になるような形にもしました。 それからフランスに来ていたインドの農民たちと一緒に遺伝子組み替えの米を破壊したりもしました。
 こうした闘いに対して弾圧が向けられました。確かに収監されるというリスクもあります。それを怖がって、この闘いを止めることわけにはいきません。
 われわれの仲間の一人が収監されると、より多くの仲間たちが立ち上がって闘いが続けられるという状況があります。そうした努力のおかげでヨーロッパでは、八〇%の人々が遺伝子組み替え作物に反対の意見を表明しています。これは、農民と消費者が手に手を携えて共闘が組めるということです。非常に勇気づけられています。
 私は、日本の皆さんに遺伝子組み替え食品、米、稲と闘うことをすすめます。場合によっては、違法とされるような手段を取らなければならないかもしれませんが、それもしかたがないと思います。遺伝子組み替えの稲を作ることで、単に基本的な食物が脅かされることだけではないのです。今日、お米は地球上で最も代表的な穀物となっています。それと結びついた文化というものも存在します。
 一度この遺伝子組み替えが行われてしまうと、単にその作物が変わるだけではなく、何千年にもわたって培われてきたわれわれの自然に対する関係、文化に対する関係が変ってしまうのです。
 この遺伝子組み替え食物に抵抗することは、それは単に権利ではなくて、もはや義務であります。それは、単に日本だけではなくて、世界中で行わなければなりません。この遺伝子組み替え作物を妨げるということは非常に大きな闘いとなっています。
 したがって皆さんに不服従をしなさいとすすめたい。そして、何年も過ぎた後に、振り返ってみた時、誇れるような業績を残していただきたい。さすがに日本では、米作りが基本的な農業であったために、遺伝子組み替えがストップされたんだ、そういうように振り返るような形で、ぜひ闘いを進めていただきたいと思います。
 闘うと申しましても、武器はありません。われわれは弱者の武器である非暴力を用いて闘わなければなりません。しかし、われわれが決然とした態度で臨むならば、さまざまな闘いを結びあわせることができるに違いありません。そうした連帯によって、われわれはこの世界を変えることができ、より公正な世界というものを作ることができるはずです。
 いつの日か、われわれは、農民であることに全く恥じることはなく、むしろ大いなる誇りをもって農民であると言えるような世界が来ることを願っています。そして農業と市民たちとの連帯が成立し、食糧を絆にして文化と自然との間の調和というものを再びかちとることができると確信しています。
 私は、ヴィア・カンペシーナ(農民の道)という国際的な農民の組織にも所属しています。この組織は、世界中の約百の農民組織を連合にした組織です。この組織のスローガンを紹介して終わりにします。「希望をグローバル化するために 闘いをグローバル化しよう!」。  (文責編集部)


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